クライアントの目

エスネットワークスではコンサルタントが常駐して、会計や財務の実務支援を行い、さらに経営者支援から経営者そのものの輩出まで行っています。今回は、2016年6 月のM&Aを機に、連結決算フローとKPIレポーティングフローの構築を支援させていただいたお客さまをご紹介いたします。担当コンサルタントがお伺いし、率直なご意見をいただきました。

ご協力いただいたのはファーストキッチン株式会社 代表取締役社長の紫関修氏と取締役CFOの西川禎則氏、管理部経営企画ユニットの千藤靖之氏です。同社は2016年6月にウェンディーズ・ジャパン株式会社の傘下に入り、世界でも類例のないハンバーガーチェーンのコラボ「ファーストキッチン」と「ウェンディーズ」のコラボ業態「ファーストキッチン・ウェンディーズ」を展開。コラボ店は前年度に20〜50%増のペースで売上を伸ばし、2017年には関西にも進出。さらに出店ペースを加速させています。今回はウェンディーズ・ジャパンとファーストキッチンのM&A時に、ご支援を担当いたしました経営支援第1事業本部 横張亮輔がインタビューします。

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世界でも類例のない2ブランドのコラボ。
Q.まずは新しくなった御社の事業をお聞かせください。

紫関社長

ファーストキッチンはサントリーが立ち上げてから40年事業を行ってきました。スタートは、ベーコンエッグバーガーが象徴するようにハンバーガーチェーンでしたが、パスタなどを提供し、メニューのバラエティで差別化を図ってきました。ところが、それによって“ファーストキッチンって何?”と顔が見えなくなっていました。現在、国内ハンバーガー業界を見れば、マクドナルド一強の状態です。ウェンディーズは、これまで二度、日本市場へトライしましたが、必ずしもうまくいったとはいえない状態でした。今回は、我々も日本のファストフード市場でシェアを拡大できるラストチャンスだと思い、ファーストキッチンというアセットと、ウェンディーズのアセットをどう組み合わせていくか、を日々考えています。

Q.コラボ店舗は現時点で何店舗ですか?また、顧客層はどのようになっていきますか?

紫関社長

2017年11月時点で26店舗です。当初の計画を上回り、コラボ店出店を加速しています。ファーストキッチンはメニューがバラエティに富んでいて、カフェタイムに強く、女性客が7割を占めていました。一方、ウェンディーズは男性客が6割。ランチやディナータイムに強く、ハンバーガーファンが多く、平均客単価も高い。それぞれの強みがあります。今後の展開については、立地条件の視点から、繁華街、ビジネス街、郊外、ショッピングセンターで分けて考えています。例えば、渋谷店では、外国の方と男性客が多く、女性も少し高いお金を払っても良いという方に変わってきています。郊外も売上は伸びていますが、さらに上げていくための施策を今考えています。おそらく、今我々がやろうとしている、既存店に異なるブランドを乗せて投資回収しようというモデルは前例がないことだと思っています。売上が大きくプラスになってきていますね。

Q.業績が好調な要因は?

紫関社長

好調ではありますが、まだまだ道半ばです。初年度はハード、ソフトに投資がかかりますので、なかなか利益は出せませんが、売上で見れば130〜140%伸びている。この数字を見れば、このビジネスモデルは成功と言えるかもしれません。正直言えば、ワンブランドでプライスゾーンを広げていくことはとても難しいんですね。今、ファーストキッチンとウェンディーズという2ブランドがあるおかげで、ウェンディーズのファンはウェンディーズのハンバーガーが食べられ、ファーストキッチンのファンはファーストキッチンのポテト、デザートなどが食べられる。そんな感覚で使われているので、130〜140%の数字が出せているのではないかと思っています。私も長年ファストフードのビジネスに携わって来ましたが、このビジネスモデルはこれまでにない非常にユニークなものだと思っています。

Q.コラボ店の認知度は上がっていますか?

紫関社長

これもまだ途上ですね。現在PR戦略に取り組んでいて、今年に入ってからテレビや雑誌、新聞に記事としてとり上げられる機会が増えています。広告効果は概算で4億円になると思っています。露出を続けていくことで、認知度が上がっていくと思います。しかし、広告はあくまでもバックアップです。最終的にはやはりお店です。お店に来ていただいて、良いサービスを受けてご満足いただくことがブランディングの基本です。来た人を逃さない、もう一回リピートさせるための施策はこれからさらにチャレンジしないといけません。

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赤字が常識の都心店を黒字化。
Q.今後の出店エリアについてはどのようにお考えですか?

紫関社長

フランチャイズの新店は全国に出していきます。特に関西、九州、昔で言うところの太平洋ベルトには出していきたいですね。これは個人的な考えですが、東京・神奈川より以西のほうがチャンレンジできると考えています。我々のビジネスポイントのひとつは坪効率(売り場1坪あたりの売上)なんです。この数値が我々の利益率を決めます。なので、家賃が安いエリアで売上が高いほうがいい。この点からすると、東京はバランスが非常に悪いんですね。渋谷にあるファストフード店は、ほとんど赤字と言われているのはそう言うことなんです。私もファーストキッチン渋谷店をコラボ店に変えるときには、正直すごく悩みました。撤退してもいいんじゃないかと思ったほどです。しかし今、渋谷店は見事に黒字化を果たしました。きっともっと伸びると思います。これは戦術次第なんです。ロケーションによっていろんな事象が起こる。それを細かい戦術を持って対応することで、売上と利益は必ず上がっていきます。ただ、この方法を社内に浸透させるには時間がかかりますがここは今後しっかりと取り組んでいきたいテーマです。

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ストーリーが語れる数字を。
Q.弊社が提供させていただいた取締役会のレポーティング資料はいかがでしたか?

西川CFO

株主が変更となり、新しい経営陣が入るタイミングで、レポートそのものを見直ししましょうということで御社に支援していただきました。それまでは社内のさまざまな資料はバラバラでした。これを機に、資料に統一感を持たせ、経営に役立つものにしたいという要望に御社は応えてくださいました。今回つくっていただいたレポーティング資料で基盤ができたと言っても過言ではありません。

千藤氏

紫関社長が来てからは、あの資料にもう一工夫を加えて、今でも使っています。

紫関社長

良いフォーマットをつくっていただいたと思います。ありがとうございます。さまざまな方が、さまざま資料を欲しがるので、フォーマットがバラバラだと、弊社の千藤がそれに応じてフォーマットを考案しなくてはならないところでしたが、統一されたおかげで、ものすごくわかりやすくなりました。最初の1ページ目で物事の全体像が把握できるのはとても便利です。でももっと言うと、このフォーマットづくりは、私が入る前のことだったので、できれば一緒にやりたかったと思っています。わかりやすく出していただいたレポートはとても良いものですが、数字からファーストキッチンならではのストーリーが語れないとダメだと思っていますし、改革に向けてチェックすべき項目があると思っています。この点で、もしも一緒に作成できたら、もっと良いものができたと思います。後は資料を使う側のトレーニングも必要ですね。また、次に、こういった資料は社員が手をかけずに自動で出力できるようにしたいです。社員の作業時間をゼロにして、そのぶん彼らに数字の意味、背景について考える時間を与えたいと思っています。

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毎年、職務経歴書を書く。
Q.私たちがコンサルタントとして社内に入らせていただいたときの印象はいかがでしたか?

千藤氏

当時、年齢の近い横張さんが入って来てくれて、毎日遅くまでお付き合いしていただき、本当に感謝しています。メンバーとも積極的にコミュニケーションを取ってくれて、あるべきフォーマットについて一緒に考えてくれました。私自身、新たなスキルを身につけることもでき、非常に充実した2か月間だったと思います。

Q.どのような感じに社内は変化しましたか?

紫関社長

私が就任して1年ほどですから、大きく変わりましたとはまだ言えませんが、私は社員の皆さんに、毎年、職務経歴書を書いてくださいと伝えています。これは私が過去の会社からずっと言ってきたことですが、新しい物事にチャレンジしたら、それを経歴書に書くことができますよね。自分の仕事の棚卸しをして、今までやってきたことや今やっていることを新たな要素としてプラスする。そのためには、どのように時間をつくればいいのか、不要な仕事は見直すとか、そういう感覚を一人ひとりに身につけていってほしいと伝えています。部門を問わず、一人ひとりがプロフェッショナルとして、お互いリスペクトし合い、高め合えるような新しいカルチャーをつくっていきたいです。もしも、来年に来ていただいて、インタビューを受ける機会があったときには、変わりましたと言えると思います。

Q.今後、弊社のサービスに対する期待をお聞かせください。

紫関社長

これからシステムを変えようと考えています。社員の生産性を上げるためにも、KPIをどのように加工してアウトプットしていくか、スーパーバイザーや店長たちにどういう数字を見せれば効果的かなど、これら、次のステージに向けて検討していきます。機会があれば、そのときにお力を借りることができたらありがたいです。バラバラだと、弊社の千藤がそれに応じてフォーマットを考案しなくてはならないところでしたが、統一されたおかげで、ものすごくわかりやすくなりました。最初の1ページ目で物事の全体像が把握できるのはとても便利です。でももっと言うと、このフォーマットづくりは、私が入る前のことだったので、できれば一緒にやりたかったと思っています。わかりやすく出していただいたレポートはとても良いものですが、数字からファーストキッチンならではのストーリーが語れないとダメだと思っていますし、改革に向けてチェックすべき項目があると思っています。この点で、もしも一緒に作成できたら、もっと良いものができたと思います。後は資料を使う側のトレーニングも必要ですね。また、次に、こういった資料は社員が手をかけずに自動で出力できるようにしたいです。社員の作業時間をゼロにして、そのぶん彼らに数字の意味、背景について考える時間を与えたいと思っています。

なくてはならない存在へ。
Q.では、最後に新生ファーストキッチンとしてアピールをお願いします。

千藤氏

まず我々の大きな売りのひとつは、やっぱりウェンディーズとファーストキッチンのコラボレーション店舗です。肉厚なハンバーガーとウェンディーズチリをもっともっと皆さんに知っていただきたいと思います。同時に、ファーストキッチンはハンバーガーだけでなく、パスタやフレーバーポテト、デザートなどバラエティあふれるメニューがありますので、ウェンディーズとファーストキッチンの両方を一緒に楽しんでいただきたいと思います。紫関社長が来てからは、季節ごとの商品のキャンペーンも改めました。例えば、現在展開しているスープパンです。これは女性にたいへん好評をいただいている商品ですので、ぜひお試しください。また、春になったら新しい驚きのある、必ずやご満足いただける商品を販売すべく、現在鋭意開発中です。ぜひ一度、ご賞味いただければと思っております。

紫関社長

加えて、私からも申し上げますと(笑)、マーケットに必要かどうかで会社は決まりますよね。後もうひとつは、お客さま、消費者にとって、この会社が必要かどうかだと思うんです。このふたつがものすごく重要で、我々が他と一緒だよねと言われるポジショニングだったら、いつでも置き換えられてしまうし、なくてもいいわけです。我々は消費者にとっては、たかだか130店舗の企業です。マクドナルドは3,000店舗です。マクドナルドと戦ったときに130店舗でも、“なくてはならない”と言われるようにしないと、会社としては存在価値がないと思っていますし、そこを目指しています。もうひとつ言うと、いろんなオケージョンで皆さんはお店やカフェに行くと思いますが、おなかを満たすためだけに行くわけではありません。ホッとしたいとか、ちょっと息抜きしたいとか、そういうものを提供できることが重要ですし、そのためにもそういう雰囲気をつくることが重要です。いい笑顔で応対してもらえたら、それで十分気持ちいいですよね。そういう店を我々はつくっていかないといけないですし、目指すところはそこかなと思います。お店では、お客様にご意見を投函いただけるようしていますから、ぜひ匿名でいいので、皆さまから様々なご意見をいただけましたら幸いです。

本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

担当者の横顔

横張 亮輔
株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部


2010年慶應義塾大学商学部在籍中に公認会計士試験に合格。2012年同大学を卒業後、株式会社エスネットワークスに入社。IPO準備企業での経理実務支援、未上場会社での経理BPR、上場企業での開示資料の作成支援、ベンチャー企業でのIPO支援等に従事。その他、バリュエーション、DD、ファイナンシャル・アドバイザー業務等を多数経験。直近ではプライベート・エクイティ・ファンドのPMI支援を主として担当。

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