クライアントの目

エスネットワークスは会計税務コンサルティングを切り口として、現在では主にベンチャー企業および中堅中小企業に対してCFO機能を組織的に提供しております。CFO機能の提供と一言で表現しながらも、実際の支援内容は多様なコンサルティングメニューにより構成されています。近時の傾向では、計数改善の依頼をいただきながら、合わせて人事制度構築についてもご相談をいただく機会も増加しております。今号では当社が提供する人事制度コンサルティングの事例をご紹介いたします。担当コンサルタントが率直なご意見を伺いました。

ご協力いただいたのは、株式会社ポテトかいつかの代表取締役社長 貝塚みゆき氏と、同社執行役員 杉野正雄氏です。さつまいも卸問屋から始まった同社の事業は、小売向けの焼き芋用原料の販売事業へと発展、その後直販事業にも乗り出しています。また、時代に即した販売チャネルの確立だけにとどまらず、おいしい焼き芋を国内外へお届けするために、苗作り、栽培、貯蔵、加工、出荷までの各工程に目を配り、新しいさつまいもの価値創造に積極的にチャレンジしています。今号では、同社の人事制度構築にあたって支援させていただいた担当コンサルタントの武内栄希がインタビューします。

お客さまの声に押されて直販事業へ

Q. まずは御社の事業をご紹介いただけますか?

貝塚社長
当社は創業50年を迎えたさつまいもの専門の会社であり、主に茨城県産のさつまいもを取り扱っています。現在の主力事業は卸売事業と直販事業の二本柱です。卸売事業については、創業当時は、さつまいもに限らずさまざまな野菜を市場に出していましたが、徐々にさつまいもに特化する形となりました。メインは小売向けの焼き芋用原料の販売ですが、加工品メーカーや外食企業とも取引させていただいています。さつまいもは、戦後の食糧難の時代から日本人を支えてきた食料でしたが、高度成長期に入り食生活が豊かになる中で、だんだん省みられなくなっていました。しかし近年は、健康食ブームが追い風となって見直されてきたと感じています。最近では品種改良も進み、かつてはホクホク系の焼き芋しかありませんでしたが、ネットリした食感の非常に甘い品種が生まれ始め、ケーキを食べてきた若い世代に受け入れられつつあります。このような環境の中で、少しずつ事業を拡大してきました。

Q.直販事業を展開された経緯はどのようなものだったのでしょうか?

貝塚社長
従来の焼き芋のイメージは、昔の貧しいころの食べ物としてどちらかというと価値が低いものだとされてきました。私が小学生のころ、男の子から芋屋と呼ばれたことがとても嫌だった思いが強く、家業に入ったころからさつまいもの価値を高めたいと常に考えており、それには自分達で今までにない売り方、見せ方を確立し表現していかなければならないと思っていました。以前は、卸売事業者として一般消費者のお客さまの前には出ない産地と一般消費者をつなぐ架け橋となってきましたが、お客さまに商品を直接お届けしたいという気持ちが強くなったのが始まりです。実は直販を開始する前には、近所の方におすそ分けをしていたんですが、そのうちに評判を聞きつけて遠方からもお客さまが工場併設の事務所まで買いに来られるようになりました。店舗も何もありませんから、レジを事務所の受付カウンターにおいて、スタッフが事務の仕事をしながら、お客さまがいらしたらお会計していたのが、当社の直販事業の原風景です(笑)。そこから口コミでお客さまの層が広がって、今では4店舗、加えて通信販売も行っています。

Q.弊社の社員も通販で時々購入しているようで、隣席の同僚も私が取材に行くと言いましたら、「結構私買ってます。大好きです。」との言付けを頼まれました(笑)。直販事業を始められて、社内にはどんな変化がありましたか?

貝塚社長
ありがとうございます(笑)。社内の変化について言いますと、直販事業を始めた途端に社員のみんなの意識が変わったんですね。お客さまの眼前に出て、直接商品を手渡しするということは、当然会社の名前も直接覚えられますし、一般消費者のお客さまから直接感謝の言葉をいただくことになります。勿論はじめは小売の素人でしたから、お叱りもたくさんいただきましたが、お客さまのありがたいお言葉に支えられながら、社員と共に成長することができました。もう一つの変化は、若い世代の女性が多く入社してくれるようになったことです。以前は年配の社員が多く、農作物を扱う会社らしい年齢構成だったんですが、これも社内の雰囲気を変える大きな変化でした。ちなみに、現在本社敷地内にある本店直売所が直販事業の1号店ですが、先ほどお話ししましたように工場の直売所の延長線上だったので、それほど高いハードルではありませんでした。しかし、2号店は全くゼロからの立ち上げだったので、本当に勇気がいる、ハードルの高い一歩でしたね。


「家業」から「企業」への 転換の象徴として

Q.弊社のサービスを選んでいただいた経緯を伺えますか?

杉野執行役員
人事制度構築の前段として、昨年度から会社の業容拡大に伴う経理財務業務や日々のオペレーション業務の改善をエスネットワークスさんにお願いしていました。同じタイミングで人事制度にも課題を感じていて抜本的に作り直したいと考えていたところ、エスネットワークスさんが人事制度設計のコンサルティング業務も提供されていると伺い、それならばと、あらためてお願いさせていただきました。

貝塚社長
当社の歴史を振返ってみますと、3つのターニングポイントがありました。1つ目は小売店に機材を導入して始めた焼き芋ビジネスの開始。2つ目は直販事業の展開。そして3つ目は今まさに進行中ですが、事業承継です。この10年ほど、お陰様でさつまいもがあらためて注目され、見直されてきたタイミングで当社も急成長を遂げてきました。とはいえ、経営基盤が整わないままに性急に売上だけを作ってきた状態で、それこそ足元がグラグラしていた状態です。これに危機感を覚え、事業承継のタイミングでさまざまなアドバイザーの方々のご協力をいただきながら社内の基盤づくりをやっていますが、人事制度構築もその1つです。計数まわりでご協力いただいた縁もあり、あらためてエスネットワークスさんにお願いし、当社に合致する人事制度を取り入れたいと考えました。

Q.人事制度導入にあたってのテーマは何だったのでしょうか?

貝塚社長
先ほどのターニングポイントでも触れましたが、今、当社は事業承継の段階。私としましては、これまで家族経営であった「家業」から「企業」へということを常に意識していますし、社内でもそうした段階にあることを共有しています。思い返せば10年前は、おじいちゃんおばあちゃんが多かったんですよ。平均年齢はおそらく60代くらいでした。そういう農家が大きくなったような組織に、少しずつ若い方が入社してくださるなど変化が出てきました。最近では事業の拡大にともない、経験者採用も積極的にしています。そういう意味で、古くからいる社員も新しく入った社員も将来に希望の持てる、社員みんながより「働きがいを感じられる会社」にしたいと考えていました。 杉野執行役員:「働きがいを感じられる会社」にするというのが目標で、それを分解して考えて、公平で、一体感のある、働きやすい人事制度というものを目指しました。具体的には、頑張ったらしっかりと報われる評価・賃金制度、シンプルで統一感のある等級制度を作り、有給休暇制度にも手を入れて休暇を取得しやすく変更し、セーフティネットとしての有給休暇積立制度も新設しました。その前準備として、次のような一連の作業をエスネットワークスさんに手伝っていただきました。

● 従業員アンケート調査
● キーパーソンへのインタビュー調査
● 現状賃金分析やSWOT分析
● 等級制度設計(等級区分、等級定義、昇格ルール等の策定)
● 評価制度設計(業績評価および行動評価項目策定、評価シート作成 など)
● 賃金制度設計(賃金シミュレーション実施、賃金テーブル設計 など)
● 人事制度ガイドブック作成
● 人事制度説明会の企画/同席(一般職対象、管理職対象)
● 評価者研修

貝塚社長
合わせて社内規程の整備をはじめ、細かい点まで調整ができたことにより、会社の思いに社員が共感できるようになり、強固なチームができあがってきていると感じています。

Q.新しい人事制度に対する社員の皆さんの受け止め方はいかがですか?

貝塚社長
実際に新しい人事制度を導入し社員に説明したところ、好意的に受け入れられ、刺激になっていると感じています。一例で言いますと、等級区分を明確化するなど、人事制度を可視化したことによって社員の、特に若い世代のモチベーションが上昇しているように感じます。

杉野執行役員
そういう意味では、事前に従業員アンケートをしっかり 取ったことがよかったと思っていて、エスネットワークスさんにはそのリードも上手く行っていただきました。社員からの意見も取り入れられましたし、経営陣が勝手に作った人事制度だと受け取られないような素地を作ることができました。それは新しい人事制度の説明会の雰囲気にも現われており、参加した社員の表情が非常によかったなと。ちょっと渋い顔をしながら質問する社員もいるかと思っていましたが、比較的好意的に聞いてくれて、プラスの印象を受けた社員が多かったように感じられたことが印象深かったですね。

貝塚社長
経験者採用で最近入社した社員の中には、こんなにしっかりとした人事制度があるのかと驚く人もいました。

杉野執行役員
人事制度の効果は見えづらく、なかなか即効性があるものではないですよね。4年、5年と経って初めて効果を実感できることが多いと思います。ただ当社のような成長ステージにいると、即効性のある事例も出てきました。


「かいつか」の思いをこめて

Q.具体的に即効性をお感じになった点についてお伺いできますか?

杉野執行役員
具体的に申し上げると、採用面ですね。当社は成長ステージにあり、積極的に経験者採用を行っているんですが、地の利がない場所でハンディがあり、なかなか難しいところもあります。でも新しい人事制度を導入できたことで、我々募集する側の人間が、自信を持ってこのポジションにこの条件で、それに見合うこれをして欲しいという情報が伝えやすくなったことが大きいですね。今の人事制度がまだない段階では、新たに採用する方がどの条件でどの等級かということを勘と経験でしか導けなくて、それが属人的だから悩んでいましたが、今はそれが明確にイメージできるようになりました。実際に直近であった事例では、マーケティング担当の管理職のポジションでした。事業を拡大する上で必要不可欠で、我々がずっと採用したいと思っていたポジションでしたが、マーケティング経験のある管理職の募集ですから、ハードルは高いと考えていました。そんな中で幸運なことに、経験値の高い非常によい方が応募してくださり、その方もすごく当社に来たいとおっしゃってくださるんですけど、条件面では前職の条件が高かったということもあって悩まれていました。でも最終的には当社に入社を決断いただきました。実はその直前に、どういう人事制度があって、今後自分がどういうふうに処遇され、評価されていくのかという将来のイメージを教えていただきたいというリクエストがありました。その際にこの新しい人事制度を説明することができ、結果としては、自分自身が今後社内でステップアップしていくイメージが具体的にできたから、ぜひ入社させていただきたいと言ってもらえました。

貝塚社長
経験者層の優秀な方、一定程度処遇が高い方。この人事制度が整ったことによって、すごく明確にビジョンを描ける。もちろん既存の社員もビジョンを描ける。これがやはり非常によかったと思いますね。

Q.コンサルタントの働きぶりはいかがでしたか?

杉野執行役員
大変、満足しています。担当である武内さんが、我々が進めやすいような形を柔軟性をもって対応してくださったので、本当にありがたく思っています。

貝塚社長
そうですね。柔軟な対応に加え、きちんと「かいつか」の考えや思いを人事制度構築に取り入れようという姿勢がすごく嬉しかったですね。いろいろな知識がおありの中でアドバイスをしてくださるんですけど、必ず頭ごなしにせずに、一緒に作っていこうといったスタンスに感謝しています。その雰囲気づくりを最初から最後まできっちり保っていただけたこともよかったですね。

杉野執行役員
打ち合わせの度にさまざまなテーマで議論をする際、分からないことがやはりたくさんありました。その際に必ず選択肢を用意してくれていて、「この場合はこういうのがあります」と。これが正解だという紋切り型ではなくて、いろんな選択肢がある中で、「自分としてはこれを勧めますがどうですか」とレコメンデーションをいただけたことが、我々にとっても自分たちがきちんとこの制度を作れているという実感を持てましたし、自分たちの意見をきちんと反映できているという枠組みで議論ができたとことが、高い満足感につながったんだと思います。

Q.人事制度の今後の運用方針は決められていますか?

貝塚社長
今年度からは人材育成も重視していきたいと考えていますので、管理職層から順に社内研修を強化していこうと計画しています。個々人が成長していきながら、結果として会社の成長にも結びついていくという形を作っていきたいと思います。

杉野執行役員
新しい人事制度の導入はある意味1つのツールでしかありません。人事制度は導入して終わりでなく、今後どう運用していくのかを議論していきたいですし、社員の意識やスキルも高めていきたいですね。その点でも、エスネットワークスさんにお手伝いしていただきたいので、引き続きよろしくお願いします。

貝塚社長
そうですね。まだ本当に緒についたばかりなんですが、人事制度の導入もいったん落ち着きましたので、これから手掛けたかった経営理念をしっかりと議論したいとも思っています。新しい経営理念として、ミッション、ビジョン、バリューを議論する場を先日スタートさせました。その議論を形にして、一体感のある経営実践の一助にしたいと考えています。


さつまいものことならポテトかいつか

Q.今後の事業展望等を最後にお聞かせください。

貝塚社長
さつまいもは、まだまだポテンシャルが非常に高い野菜の1つであると考えています。さつまいもは身体に良いと一般的に言われてはいますが、それを裏付ける学術的なデータや論文は非常に少ないんです。また、安全や美味しさをより向上させるために、当社でも苗作りから販売までの全工程を強化していきたいと思います。長期視点では今後、美味しさに加えて腸内環境を整えるという機能性食品としての側面から、介護現場の問題の解決に貢献できたらというビジョンを描いています。さつまいもの価値を高めて、世の中に貢献する。これが事業をする喜びであり、原動力です。

杉野執行役員
社長のいう機能性の追求でいうと、実際のところ研究開発は相当に時間がかかりますし、体力のある規模の大きい企業じゃないとなかなか取り組みづらいんです。とはいえ、我々はさつまいものリーディングカンパニーになりたいと思っていますし、そうである以上は避けて通れませんから、しっかり地に足をつけて取り組んでいきたいと思っています。そして当社のコーポレートサイトでも謳っているのですが、「さつまいもの新しい価値を育む」こそが当社のミッションだと思っています。我々はさつまいもを専業で扱っているからこそ、真の意味でさつまいものリーディングカンパニーになるということを真剣に議論しています。その延長線上には、例えば一般の方が、「ジャガイモといったらカルビーだよね」、「トマトだったらカゴメだよね」というように、「さつまいものことならポテトかいつかだよね」と認識してもらえるようになれたら素晴らしいねと。そのためには、さつまいものさまざまな可能性を実際に我々が研究し、発信し、広く知っていただきたいと考えています。

このプロジェクトに携わらせていただいて、お伺いした思いはお2人に限らず従業員の皆さんからも同じように感じていました。今後もコンサルタントとして、また一般消費者として応援させていただき、ずっとおつきあいをさせていただければと思っています。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

担当者の横顔

武内 栄希 株式会社エスネットワークス 経営支援第1事業本部

担当者の横顔

武内 栄希 株式会社エスネットワークス マーケティング本部 ヒューマンキャピタル部 マネージャー

新卒でベンチャー企業に入社。ダイバーシティ経営、ダイバーシティマネジメントを社内で強力に推進。同社が数十名から1,500名規模へ急拡大した成長フェーズを下支えし、“ヒト”と“組織”の変化・在り方に着目し、知見を磨いてきた。現職においては、組織・人事コンサルティング部門の立ち上げにて入社。理念・ビジョン設計、経営者コーチング、次世代経営者育成、人事制度設計、人材育成体系構築、生産性向上支援等に従事。前職から現職まで、一貫して“ヒト”と“組織”に携わってきた経験と知識が強み。

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