社外役員の眼差し

2018年6月1日、株式会社東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードの改訂版を公表しました。今回の改訂には、取締役会のガバナンスの実効性確保を目的とし、十分な人数の独立社外取締役の選任や、その役割・責務を果たすにあたり幅広いバックグラウンドを持つ者の選任を期待するべく、ジェンダーや国際性といった観点に立脚した多様性の実現等といった点が盛り込まれました。奇しくも、当社においても経営活動への多様な価値観の反映を目的として、2018年3月より新任社外取締役が就任しております。本稿では、当社社外取締役であります、江連裕子をご紹介します。

女性初の取締役就任

白石
先日、東証よりコーポレートガバナンス・コードの改訂版が公表され、その施策の1つとして社外役員の活用をはじめとしたガバナンス強化がより図られる方向性が感じられますが、折しも当社でも今春より、社外取締役として新たに江連さんにボードメンバーとして経営参画いただいています。本稿では、「社外役員の眼差し」と銘打ちまして、対談をさせていただきたいと思いますので、宜しくお願いいたします。

江連
こちらこそどうぞ宜しくお願いいたします。いつもは私がインタビュアーなので、今回はインタビューを受ける側で逆ですね。

白石
確かにそうですね。まずは江連さんのご経歴からお伺いできますか。

江連
私は経済キャスターとして経済番組を長年担当していますが、その間にKPMG税理士法人で勤務した経験もあります。現在、東証一部に上場している株式会社グルメ杵屋の社外取締役をさせていただいていますが、実はKPMGで私を採用してくれた直属の上司が、今、株式会社グルメ杵屋の幹部で、「女性の社外取締役を探している」というお話をいただいたことがきっかけでした。グルメ杵屋は約400店舗を運営する外食事業が主力ですが、顧客の半数が女性であるにもかかわらず、取締役は全員が男性で女性のボードメンバーを探していました。ちょうど同じタイミングでコーポレートガバナンス・コードが導入され、女性を積極的に登用しようという風潮が社会的にも高まってきた時期でした。私は海外から帰ってきたばかりの時期で、お声をかけていただきました。2015年6月のグルメ杵屋の株主総会で選任され、この6月で4期目に入りました。そして今年の3月からは「エスネットワークス」の社外取締役にも就任させていただきました。白石さんも社外取締役を務めていらっしゃいますね。

白石
私は株式会社地域経済活性化支援機構(以下、REVIC社)と当社が出資して設立した、REVICパートナーズ株式会社で社外取締役を拝命しています。

江連
白石さんはどういった経緯で就任されたのでしょうか。

白石:
REVIC社は改組される前、株式会社企業再生支援機構、略称でETICという組織で、名前のとおり企業再生を主たる事業としていました。そのころ、当社で私が率いていたチームが、ETICが投資し、支援していた企業のプロジェクトに参画していたのです。そのお仕事で、当社のコンサルティング実績を評価していただいたのですが、その後時が経って、REVIC社が人材の支援と資金的な支援を両面で実施するというファンドコンセプトを立ち上げたときに、ハンズオン・コンサルティングを提供するコンサルティングファーム複数社に声をかけたのですが、そのうちの一社が当社でした。そこからコンペが行われ、最終的に当社が選ばれREVIC社のファンド組成に参画したというのが経緯です。

江連
当初から取締役として入られたのですか?

白石
そうですね。この案件に関わった以上は自分で現場に行ってこいと言われまして(笑)。取締役ですが、当初はREVIC社に転籍出向という形を取りました。外部から取締役に就任するだけの関与スタイルもあったでしょうが、情報をREVIC社のメンバーと等しく取得するためには、同社に転籍する必要があったためです。当社から関与している他のメンバーも、例外なく全員が転籍出向する形を取っています。ただ私は今、当社に帰任しましたから、取締役としての立場を残しています。その意味では、江連さん同様、非常勤社外取締役ということになりますね。


社外取締役として期待される役割

白石
江連さんは、初めてグルメ杵屋さんから社外取締役就任の打診を受けたときは、実際のところどう思われましたか?

江連
え?私ですか?と正直驚きました。経済キャスターになることが夢で、夢が叶って納得いくまでやって、次に何をしようか考えているタイミングでした。私はアナウンサーという職業にこだわっていたわけではなく、「経済に関わる仕事がしたい」という柱からまったくぶれずに生きてきて、その延長線上に経済キャスターがありました。将来的に経営者になりたいとか、マネジメントをやりたいと考えて経済キャスターをやっていたわけでもありませんでしたので正直、躊躇しました。もちろん外食産業に特別詳しいわけではありませんでしたので、その旨を声をかけてくださった元上司にお伝えしましたが、「だからこそ新しい風を吹かせられるのではないか。むしろ外食での経験があると、例えば原価等、細部を追求してしまって客観的な意見が出てこないこともある、消費者視点や女性目線の意見を求めているのです」と言っていただきました。

白石
なるほど。期待や不安はあったのではないですか。

江連
そうですね。ただ、自分がターニングポイントを迎えるたびに相談してきた、尊敬する元上司からいただいたお話でしたので、それならば、どれだけ力になれるかわからないけれど、チャレンジしてみよう!と考えました。

白石
実際もう4期目に入られたということですが、ご自身で発揮された成果でしたり、課題感を感じたりされた点を伺えますか?

江連
就任してからは知り合いの経営者や社外取締役の方々にもアドバイスをいただきながら手探りの状態でした。社外取締役という立場でどこまで関与するべきなのか?という点で非常に迷いました。独立社外取締役ですからガバナンスのチェックはもちろんですが、関われば関わる程、会社を成長させたいと思うようになります。業務を執行する立場ではないけれども、やはり企業価値の向上には貢献したいと。そうした前提に立ちながら、私自身、実際に店舗や関連会社を積極的にまわり、できる限りの意見やアドバイスを言ってきました。また、マスコミ対応や、個人投資家向けのIR、以前の職場で経済関係やメディア関係の人たちとさまざまな交流があったので、そうした人的ネットワークを有効な形で提供することに努めてきました。

白石
加えてこの3月からは、当社においても社外取締役として関わっていただいているわけですが、グルメ杵屋さんの社外取締役に就任されて以降、同趣旨のお声がけは増えた印象ですか?

江連
そうですね。特に上場企業の経営に一定程度の影響力を持つコーポレートガバナンス・コードの改定がありましたから。例えば「クオータ制を日本にも…」という潮流がある一方、そうした候補者が世に溢れているわけでもない現状がありますからね。

白石
そんな中、当社のオファーを受けていただいた理由としては、どういった点が挙げられますか?

江連
私自身のキャリアを改めて考えてみたときに、「金融」に興味があったという点があると思います。中学生のころから税理士を目指していたこともありますし、銀行員になりたいと考えていたこともありました。実際のキャリアとしては経済キャスターを長くやらせていただいていますが、税理士を目指していたことを忘れた頃に、「エスネットワークス」という公認会計士や税理士が活躍する会社からお声がけを受け、昔、憧れていた記憶が蘇ってきたところがあります。税理士法人での勤務経験もありましたので、仕事内容や会話の内容はある程度理解できると思いました。友人曰く、「やっと行きつくところにたどり着いたね」という感じのようです(笑)。

白石
そうだったのですか。実際に当社の社外取締役に就任されて、関わっていただく前に当社に対して抱かれていた会社像とのギャップは感じられましたか?

江連
やはり会社の社風は本当にそれぞれ違うのだと改めて思いました。経営者インタビューで多くの会社を訪問させていただきましたが、実際に組織の中に入ってみないと分からないことがありますし、何社か見ることによって初めて比較してみることができますよね。それでエスネットワークスは、率直に「いい会社」だなと思いました。

白石
本当ですか、それは嬉しいですね。具体的にお伺いしてもいいですか?

江連
私のキャリアで言いますと、メディアの世界で長く仕事をしてきました。特にアナウンサーはなりたい人があまりにも多過ぎて、なるのも大変ですが、なってからも数少ない椅子を取り合う、もの凄い競争社会でした。そういった環境からみると、皆さん、穏やかで優しい人が多いなと思いました。戦略コンサルティングファームも競争するイメージでしたが、エスネットワークスはUp or Outではなく、Up or Up、誰かを蹴落とすというよりは、皆で助け合いながら一緒に頑張って成長しようという社風がすごく息づいていて、ある意味で驚きました。

白石
もう少し競争意識が高い組織だと思われていたということですね。

江連
そうですね。夕方になるとほぼ全社員からメールで送られてくる「日報」も興味深いですよね。今日一日の所感や業務内容、気になるニュース等を報告し合い、皆で高め合うという仕組みになっていて、その文章の内容が、助けていただきありがとうございますと同僚に感謝し、自助努力を重ねて、クライアントのためにどう成果を出すか、それぞれの立派な心持ちが窺えて、いつも感心しています。

白石
ご指摘のとおり、確かに日報は当社特有ですよね。

江連
白石さんには逆に、当社がなぜ私にお声がけをされたのか聞いてみたかったのですが。

白石
3点理由が挙げられます。まず当社の歴史上、これまで社外取締役をどちらかといえば当社と距離の近い方々にお願いしてきた前提があり、そのため客観性を持たれている方を求めていました。そしてこれまで当社が持ち合わせていなかった新しい風や、客観的な目と表現すればいいでしょうか、そうした目線で指摘をいただくことを期待していたことが1点目。2点目は、当社は男女構成でいえば相対的には男性が多く、女性が活躍できる環境の実現は過去から継続してあるテーマでした。その点において経営目線でご意見をいただける方を求めていました。最後にもう1点ですが、業態柄当社はマーケティング領域が弱く、それについて今後PR力を高めなければいけないという課題意識があり、そうしたメディア領域における知見の提供という期待があると考えています。

江連
そうですね、私は公認会計士でもありませんし、財務会計コンサルタントが大勢いらっしゃる中でアドバイスできることは、むしろ皆さんが経験されたことがない点についてですよね、マスコミ対応をどのようにすればよいか、会社のことをどのように社外へPRしていくかなどといったことですよね。

白石
それらに対する高い期待値が、オファーをさせていただいた当初の段階からやはりありましたね。

江連
これまでキャスターとして数多くの経営者にインタビューを行ったり、取材活動や記者会見などを通じて多くの企業の広報担当者との接点がありました。その際、広報の対応によってマスメディアの報道の仕方が相当変わってきますから、そのような課題についての知見を提供することでも貢献できればと考えています。いけないという課題意識があり、そうしたメディア領域における知見の提供という期待があると考えています。

江連
そうですね、私は公認会計士でもありませんし、財務会計コンサルタントが大勢いらっしゃる中でアドバイスできることは、むしろ皆さんが経験されたことがない点についてですよね、マスコミ対応をどのようにすればよいか、会社のことをどのように社外へPRしていくかなどといったことですよね。

白石
それらに対する高い期待値が、オファーをさせていただいた当初の段階からやはりありましたね。

江連
これまでキャスターとして数多くの経営者にインタビューを行ったり、取材活動や記者会見などを通じて多くの企業の広報担当者との接点がありました。その際、広報の対応によってマスメディアの報道の仕方が相当変わってきますから、そのような課題についての知見を提供することでも貢献できればと考えています。

白石
では、社外取締役に求められる心がけや素養について、何か意識されていることはありますか?

江連
世の中の風潮として、ダイバーシティ促進を目的に女性の社外取締役を増員しようという動きがありますが、女性とか男性である前に、一人の人間としてというベースが大切だと考えています。その人の倫理観と正義感で、おかしいと思ったところはおかしいと言えるかどうか。それは性別とは関係なく、個人の問題だと思うのですよね。キャスターの仕事でも公平公正を心がけてきましたが、然るべき場で自分の意見をきちんと言えるかどうかということが一番大切で、そのベースにあるものは自ら培った倫理観だと思います。社員を守ろうという意識や、株主のため、企業の成長のためという意識があれば、たとえ、取締役会などで少数意見になったとしても、意見を主張すべきだと思います。そうした意味で、私は自らの倫理観を大切にしようと心がけています。

白石
当社としてもその点を江連さんに期待しています。客観性というものの裏付けが、さまざまな経営者の方と接して来られたことによって研ぎ澄まされた感覚値が、圧倒的に他の方より高いのではなかろうかという期待がありました。ある種の物差しの持つ正確性が、いろいろなご経験や人とのつながりの中であると感じています。

江連
本当ですか、ありがとうございます。

白石
物差しの正確さもそうですし、深みがあるというか。どういう表現がいいのかわからないですけど、客観性の物差しがしっかりされている印象がありますね。

江連
業界によってその基準やルールも本当にまったく異なると感じます。

白石
その違いということを理解されているということもそうですし、臨機応変かつ柔軟に理解されようというスタンスも含めてですね。私見ですが、社外取締役として気をつけるべき観点は、客観性と公平性があると思いますね。そして自分独自の付加価値が何かを考えたとき、自分のこれまでのコンサルティング経験でさまざまな会社を見てきた中で養われていた自分の物差しで、他社と比較したときにどこかおかしいか、公平性と客観性を持って話せることなのではないかと思います。

江連
私も「勘」というものは過去の経験や知識に裏付けられたものなので大切にしています。これまでさまざまな業種の個性豊かな経営者の方々と接してきましたし、膨大な量のニュースを扱ってきた経験に基づく感覚を重視するようにしています。もがきながら社外取締役の経験を重ねる中で、やはり自分の意見を常にきちんと言うことが信念になりました。少し思い切った表現かもしれませんが、これだけ多種多様な考え方が認められるこの時代に、皆が何の疑いもなく同じ意見だということはむしろおかしいのではないかと思います。例えば事後的に問題が発覚したときに、最初の議論の段階で誰も何も疑わなかったのかということは問題で、一人でもそこに疑念を持った人がいたということが大切だと思いますね。歴史も後になってみないと分からないこともありますし。

白石
私もそうした議論のタイミングで抱く違和感については、聞き流すままにしないで必ず質問を投げかけたり、気にしたりするようにしていますね。

江連
それを言語化できるか、数値化できるかということでいうと非常に難しいのですが、自分の中に感じるわだかまりをきちんと疑問に思い、質問したり説明を求めたりすることは心がけていることの1つです。

白石
言語化するとすれば、問題の前提や本質の部分を問いかけることを心がけています。提示されたものを是とするのではなく、そもそもなぜそれを行うのかという目的や違和感をもった際には本質的な部分まで掘り下げた質問をすることで、社外取締役として議論の機会提供ができるようにしています。

江連
同じ会社の中で仕事をしていると、疑いがなくなっていく部分がどうしても出ると思います。そういった意味では過去の社歴やしがらみの少ない人が積極的に発言することが大事です。社外取締役は結局は株主の代表でもあるという認識も持っています。

白石
難しく考えなくても、経験上、違和感をもったときにはだいたい何かが起きるのですよね。

江連
確かにそうですね。

白石
今、江連さんは当社を含めて2社で社外取締役をされていますが、今後はもう何社か関与したいですとか、あるいは時間軸を変えたときに、ご自身が社外という立場ではなく、社内のマネジメント領域に足を踏み入れたいですとか、何か考えていらっしゃいますか?

江連
私は野心家ではありません(笑)。これまでの経験上、大勢の経営者とお会いしてきて、本当に経営が大変なものであることは理解しているつもりです。特にリーマンショックのような景気の後退局面で非常にご苦労をなさった孤独な経営者も大勢みてきました。ですので、私自身が経営者になりたいという思いはありません。むしろサポートできたら良いと思っています。

白石
それは意外でした。そのようなキャリア形成をお考えになっているとばかり思っていました。

江連
よく政治家か経営者になるのですか?と聞かれますが、それはありません。むしろこれまでお世話になった方々に恩返しがしていきたいです。私の人的ネットワークの中でどのような人と人を引き合わせたら新しいものが生まれるか、どんな面白いビジネスができるのか、そういったマッチングする場に携わることが凄く好きなのです。私自身がその実際のオペレーションをするよりは、自分がつないだご縁で、新しいビジネスが現実になって成功していくことを見るのが幸せなのです。

白石
ビジネスとして興味のある領域も、明確に設定されていませんか?

江連
前向きな意味でしていませんね。例えば今回もめぐり合わせで「エスネットワークス」のお仕事に関わらせていただいて、それで改めて金融が好きということを再認識したように、もしかしたらまったく違う異業種からお話をいただくことで、もっと面白いものに出会えるかもしれない。私の人生、経済キャスターになったことも、社外取締役となったのも、そのときその場所で、誰かにお声がけいただいたことが始まりでした。自分の資質は自分では見抜けない、思いがけない人が見抜いてくれることもあると思っています。ですから常にオープンマインドで、何事も話を聞いて考えてみようと思っています。必要とされるところで、感謝して感謝されて働きたいですね。翻って、白石さんは今後のキャリアをどうイメージされていますか?

白石
やはりプロ経営者は1つ目指すべきものとして考えています。社外取締役という独立の立場よりは、社内に入って経営をするプロ経営者としてありたいと思います。例えば、今関与しているREVICパートナーズ社においても、いろいろな事情で当社に帰任しましたが、もう少し長い時間軸で関われる選択肢があったならば、同社が投資した会社に対して業務取締役として関与できればという思いがなかったといえば嘘になります。

江連
実際に経営者というか、社長になりたいという思いもありますか?

白石
そうですね。社長かCFOかというこだわりは実のところありません。今ですね、実際に社外取締役として来てほしいというリクエストを何社かからいただいているのですが、お断りをしてしまっているんです。その会社にない知見だったり、過去の経験だったりを活かせる機会だと思いますし本当に有難いことなのですが、それは私の中ではコンサルティングとして携わってきたことの延長であるという定義をしています。ですから、当社が「経営者の支援と輩出」を打ち出しているところでいうと、自分自身がその輩出という局面で、投資先やクライアントにプロ経営者として関わりたいという思いが強いですね。

江連
社員は、将来的にはやはり自分が経営者になりたいと思っているメンバーが多いですよね。

白石
そうですね。ただ当社設立からしばらくは、独立起業というイメージが先行していました。実際、そうした形で起業していった者もいます。ただどちらかというと、0から創るというよりは、プロの経営者。いわゆるできた基盤に対して、0から1ではなくて、1から10にするということ。後者に対してコミットの比重が大きくなってきた印象です。私自身で見ましても、後者にあたるかと思います。0から1を創ることは、そういう人材を育成云々というよりは、それをする者は自分で勝手にやってしまうだろうという考えが、その背景にはありますね。

江連
エスネットワークスとしては今後どのような機会が提供できるとお考えですか。

白石
「経営者の輩出」の実践機能をどう備え持つかということがテーマだと思っています。現状ですとREVIC社のファンドとAZ-Star株式会社のファンド設立・運営に当社は関わっていますが、当社がもう少しイニシアティヴが取れるファンドを設立し、当社の中に経営実践ができる環境を複数持つことができればと思っており、これはほかの役員とも共通認識として持っています。ですからコンサルティングとして社外に経営実践の場を求めるだけではなく、社内でももう少し経営実践の場が提供できるのではないかと考えています。経営領域に身を置いて感じることは、コンサルタントは、クライアントからの課題提示そのものは明確に受けて仕事が始まるのです。当社はその課題解決にオフサイトの提案に留まらず、オンサイトで実務実行支援を行うことをコアコンピタンスとしていますが、実のところこうした問題の所在はあらかじめある程度分かった上で取り組みを始めます。しかしながら、経営者はそもそも何が経営課題であるかを自ら抽出し、見極め、意思決定を行っていく必要があります。当社のメンバーは経営者の支援を通じて経営理論知をいろいろな現場や機会で習得していきますが、やはりその経営実践知の蓄積は、経営サイドに行って初めて実現できることなのです。

江連
確かにそこに圧倒的な当事者意識の差が生まれますね。

白石
加えて本稿のテーマである社外取締役と絡めていいますと、コンサルタントは常にクライアントの求める成果の実現のために100%クライアントを見て業務を遂行しますが、経営者、特に社外取締役に求められる眼差しは決してそれだけではありません。クライアントたる会社を見ることも大切ですが、市場や市井で求められる規範意識に立脚した客観性の高い眼差しこそが求められているといえるかと思います。江連さんがいろいろな会社組織に入ることで比較が初めてできるということをおっしゃっていただきましたが、当社のコンサルタントはさまざまな現場において疑似的な経営体験をしています。今般の社外取締役の数的、質的な充足が社会的に希求される背景には、こうしたさまざまな経営バックグラウンドを持つ人材が求められているという仮説が正しいことの説明材料ともなるのではないでしょうか。そのようなメンバーを数多く擁する当社としては、その点こそが業界内での差別化要因となるでしょうし、「経営者の輩出」の実践機能を社内提供することの意味にもなると考えています。こうした施策をぜひ実現していきたいと思いますので、引き続きご協力をお願いいたします。

江連
ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします。

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